投稿日: 2026-09-11
2026年9月5日、えだ歯科医院のメンバーで、第33回ADFスタッフミーティングにオンラインで参加しました。
ADFは、歯科医療に携わるスタッフが、それぞれの医院での症例や日々の取り組み、工夫、悩み、そこから得た学びを持ち寄り、互いに学び合う場です。
今回も、歯周治療、口腔機能、医科歯科連携、患者さんとのコミュニケーション、スタッフ教育など、さまざまなテーマの発表がありました。
一つひとつの発表を聞きながら、私たち自身の診療についても改めて考える、とても貴重な時間となりました。
今回の発表を通して、特に心に残ったことの一つが、
「口腔を見ることから、その人を見ることへ」
という視点です。
例えば、高齢の患者さんに義歯を作る場合。
単に「歯がないから義歯を作る」のではなく、
「今、どのくらい噛む力やお口の機能があるのだろう?」
「どんなものが食べられずに困っているのだろう?」
「義歯が入った先に、どんな生活を送りたいのだろう?」
というところまで考える。
発表された症例では、口腔機能を評価してトレーニングを行ったうえで義歯を製作し、患者さんから**「焼肉が食べられるようになった」**という喜びの声が聞かれたそうです。
歯科治療のゴールは、「義歯が入った」「歯周ポケットが改善した」という歯科的な結果だけではありません。
その先で、患者さんの生活がどう変わったのか。
私たちも大切にしていきたい視点です。
もう一つ大きな学びとなったのが、目の前の数字や症状をそのまま受け取るのではなく、
「なぜ、この変化が起きているのだろう?」
と考えることです。
例えば、メインテナンス中に、ある1本の歯だけ歯周ポケットが急激に深くなったとします。
「歯周ポケットが深いから歯周病だろう」と考えて、すぐに歯石を取ればよいとは限りません。
その背景には、歯の破折、歯の内部からの感染、噛み合わせによる力など、別の原因が隠れていることがあります。
また、「歯がしみる」という一見よくある症状についても、
「なぜしみるのか?」
「なぜ右ではなく左なのか?」
「生活の中に何か原因はないだろうか?」
と丁寧に考えていくことで、患者さんの食習慣や趣味、身体の使い方、さらにはその方のこれまでの人生背景にまでつながった症例も紹介されました。
症状だけを見るのではなく、その背景にいる患者さんを見る。
日々の診療でも忘れたくないことだと感じました。
口腔粘膜の観察についての発表も、とても印象的でした。
定期的にメインテナンスを受けていた患者さんの口腔内に、「前回とは何か違う」という小さな変化が見つかり、その後専門医療機関で詳しい検査・診断につながった症例が紹介されました。
患者さんご自身には、ほとんど自覚症状がなかったケースもありました。
定期的にお会いしているからこそ、
「前回と違う」
「いつもと違う」
「これって何だろう?」
という変化に気づけることがあります。
歯科衛生士によるメインテナンスは、単に歯石を取ったり歯をきれいにしたりする時間ではありません。
歯や歯ぐきはもちろん、舌や頬、口腔粘膜なども含めてお口の変化を継続的に見守ることの大切さを、改めて学びました。
歯磨きやフロスなどのセルフケアについても、大切な学びがありました。
医療者が、
「毎日フロスをしてください」
「もっときれいに磨いてください」
と正しいことを伝えるだけでは、なかなか続けられないことがあります。
そこで、
「どのタイミングだったらできそうですか?」
と患者さんと一緒に考える。
そして検査結果を共有しながら、
「次はここを目指してみましょう」
と患者さん自身にとって意味のある目標を作っていく。
患者さんに何かを「させる」のではなく、患者さん自身が自分の健康のために選び、取り組めるようにお手伝いすること。
私たちが大切にしている患者さんとの関わり方にも通じる発表でした。
今回のADFでは、患者さんへの診療だけでなく、歯科衛生士の技術教育についても興味深い発表がありました。
歯周病治療で行うSRP(歯ぐきの中の歯石や汚れを除去する処置)は、本来、目で直接確認することが難しい技術です。
その「見えない」を特殊な模型と動画によって見えるようにし、
実践する → 動画で確認する → 自分で振り返る → 練習する → もう一度評価する
という教育が紹介されました。
経験年数が長くなっても、自分が「できていると思っていること」と、実際の動きが一致しているとは限りません。
だからこそ、
評価することは、人を比べたり責めたりするためではなく、次に何を練習すればもっと成長できるのかを知るためにある。
これは、私たちのスタッフ教育にも生かしていきたい考え方です。
糖尿病と歯周病についての発表からは、改めてお口と全身の健康は切り離せないことを学びました。
歯科でできることは、歯周病による炎症を減らすことだけではありません。
しっかり噛めるようになることで、肉や野菜など、患者さんが選べる食事の幅が広がることもあります。
また、必要に応じて医科へ情報をつなぐことで、患者さん自身が全身の状態を見直すきっかけになることもあります。
歯科だけですべてを解決するのではなく、
「歯科で気づき、必要なところへつなぐ」
ことも、患者さんの健康を守るための大切な役割だと感じました。
そして今回、臨床の知識や技術と同じくらい印象に残ったのが、ADFそのものの文化でした。
誰かから一方的に教えてもらうだけではなく、それぞれの医院のスタッフが、
「こんな患者さんと出会った」
「こんなことに悩んだ」
「こう工夫したら変化があった」
「ここはうまくできなかった」
という経験を持ち寄り、発表します。
発表するためには、これまでのカルテや写真を見返し、自分の関わりを振り返り、「なぜうまくいったのだろう」「もっとできることはなかっただろうか」と考えなくてはなりません。
つまり、発表することそのものが、大きな学びになります。
そして、今年発表を聞いた人が、いつか次の発表者になる。
その発表が、また別の誰かの行動を変える。
そんな**「学びをつなぐ文化」**がADFにはありました。
今回のADFを通して、私たちが持ち帰りたい問いがあります。
「これって、なぜだろう?」
患者さんのお口の小さな変化に気づいたとき。
検査結果が急に変わったとき。
患者さんがセルフケアを続けられないとき。
そして、私たち自身の仕事が思うようにいかなかったとき。
すぐに答えを決めつけるのではなく、
気づく。
考える。
患者さんに聴く。
チームで共有する。
やってみる。
そして、もう一度振り返る。
そんな診療を積み重ねていきたいと思います。
えだ歯科医院が目指しているのは、病気になったところを治療するだけではなく、患者さんの健康を守り、育てていくことです。
そのためには、私たち自身も学び、成長し続ける必要があります。
今回いただいたたくさんの学びを「勉強になった」で終わらせず、一つずつ日々の診療やスタッフ教育へ生かしていきます。
これからも、患者さんと一緒に健康を考え、チームみんなで学び続ける歯科医院でありたいと思います。
