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― 海上自衛隊で学んだ「安全とチームワーク」を、歯科医療と人材育成へ ―

えだ歯科医院では、患者さんの健康を守り育てるために、日々の診療だけでなく、スタッフ(当院では「クルー」と呼んでいます)の教育やチームづくりも大切にしています。

先日参加した選択理論・リードマネジメントの勉強会で、私自身のこれまでの経験と深くつながる、大きな気づきがありました。

それは、航空機の運航と歯科診療には、安全を守り、人を育てるうえで共通する考え方があるということです。

海上自衛隊の操縦士として学んだこと

私は歯科医師になる前、海上自衛隊でP-3C哨戒機の操縦士として勤務していました。

航空機の運航では、一人の操縦士の能力だけで任務を達成することはできません。

それぞれの乗員が役割を理解し、情報を共有し、互いに協力することが不可欠です。

そのために大切にしていたのが、飛行前のブリーフィングと飛行後のデブリーフィングでした。

① 飛行前ブリーフィング ― 目的と認識を共有する

飛行前には、任務の目的、気象状況、役割分担、手順、想定されるリスクなどを確認します。

大切なのは、単に情報を伝えることではありません。

チーム全員が同じ目的を理解し、共通認識を持って任務に臨むことです。

② 飛行の実施 ― チームで協力する

実際の飛行では、計画に基づいて任務を遂行します。

しかし、状況は常に変化します。

そのため、乗員同士が情報を共有し、状況に応じて判断しながら、安全に任務を達成することを目指します。

③ 飛行後デブリーフィング ― 経験を次に活かす

飛行後には、実際に何が起きたのかを振り返ります。

良かったことは継続する。

改善すべきことは、原因を考える。

そして、次の飛行で何を改善するかを明確にする。

経験を積むだけではなく、経験から学ぶこと。

この繰り返しが、安全性の向上と乗員の成長につながっていました。

歯科診療でも、同じ考え方が活かせる

今回の勉強会で、人材育成におけるマネジャーの役割について学びました。

その中で特に印象に残ったのが、現場での教育、いわゆるOJT(On-the-Job Training)の重要性です。

例えば、新人歯科衛生士が診療を見学するとき。

「今日は勉強になるから、よく見ておいてね」

と伝えるだけでは、何に注目すればよいか分からないことがあります。

そこで、診療前に、

「今日は、患者さんの不安をどのように確認しているかに注目してみよう」

と学習の目的を共有する。

実際の診療では、そのポイントを意識して観察する。

そして診療後に、

「どんなことに気づいた?」

「良かったところはどこだと思う?」

「次は何を実践してみたい?」

と短く振り返る。

これは、かつて飛行訓練で実践していたブリーフィングとデブリーフィングに、とてもよく似ています。

目的を共有する。実践する。振り返る。そして次の行動につなげる。

この基本的な流れは、航空機の運航でも歯科医療の教育でも、大切なのだと改めて感じました。

研修を用意することと、人を育てることは違う

今回の勉強会では、もう一つ大切な学びがありました。

それは、「研修を用意すること」と「人が成長できるよう支援すること」は、必ずしも同じではないということです。

えだ歯科医院では、新人歯科衛生士の育成ロードマップや院内研修、外部講師によるOJTなど、さまざまな教育の機会を設けています。

しかし、研修に参加しただけで、必要な知識や技術が身につくとは限りません。

何のために学ぶのか。

どんな知識や技術を身につけたいのか。

実際に何ができるようになったのか。

そして、次に何を学ぶ必要があるのか。

こうしたことを、本人と一緒に確認していくことが重要です。

私自身、これまで教育の仕組みづくりには取り組んできましたが、その仕組みを実際の成長につなげる関わりについては、まだ改善できることがあると感じました。

今後は、日々の診療の中でも、短いブリーフィングとデブリーフィングをより意識的に取り入れていきたいと考えています。

安心して挑戦し、成長できるチームへ

人が成長するためには、知識や技術を教えるだけでなく、安心して挑戦できる環境も必要だと考えています。

分からないことを質問できる。

困ったときには相談できる。

新しいことに挑戦できる。

うまくいかなかったときには、責めるのではなく、事実を確認して次の改善につなげられる。

そして、できるようになったことを一緒に喜べる。

そのような環境を大切にしたいと思っています。

もちろん、医療においては患者さんの安全が最優先です。

必要な基準を曖昧にすることなく、一人ひとりの経験や習熟度に応じて、適切な支援を行うことが大切です。

私たちが目指しているのは、単に技術の高いスタッフが集まる医院ではありません。

互いを尊重し、学び合い、支え合いながら、チームとして質の高い医療を提供できる医院です。

すべては、患者さんの健康を守り育てるために

航空機の運航と歯科診療では、仕事内容も環境も異なります。

しかし、安全を守るために目的を共有すること、チームで協力すること、経験を振り返って改善を続けることには、共通する部分があります。

かつて空の上で学んだことが、今、歯科医師として、そして院長としての仕事にもつながっている。

今回の勉強会では、そのことがとても腑に落ちました。

安全を守ること。
仲間を信頼すること。
目的を共有すること。
経験を次の成長につなげること。

これからも、私自身が学び、実践し、振り返りながら、クルーと共に成長していきたいと思います。

そして、その積み重ねを、患者さんが安心して通院できる環境と、より良い歯科医療につなげていきます。

えだ歯科医院
院長 吉田幸司